インドでサティシュとヴァンダナから学ぶ「ガンジーと3つの平和」④憎しみのない非暴力とは

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2024年11月に開催されたサティシュ・クマールとヴァンダナ・シヴァが講師を務めるコース「ガンジーと3つの平和」の参加レポ、いよいよ今回の第4弾で最後です!

メイン講師のサティシュ・クマールが去ったあとは、アプルーヴァナンダ教授(Prof.Aproovanand Jha)による「Gandhi and Peace ガンジーと平和」のレクチャーがあった。

良くも悪くもサティシュの言葉はとても優しく、美しく、詩的で、「あ〜こんな世界があったらどんなに素敵だろう🕊️」と思わせてくれる。

それを一気に払拭するというか、もっとちがった「平和」の側面を私たちに見せてくれたのがアプルーヴァナンダ教授だった。

私もまだ消化しきれていないし、勉強不足なところが大いにあるものの、なんとか今の私に伝えられる範囲でシェアしていきます!


これまでの記事を逃した方はこちらからどうぞ(それぞれ長いけど、順番に読んだほうが内容も雰囲気もわかりやすいかと):

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目次

11/22(金) :午前中

2回目のシュラムダーン(奉仕活動)

まずは恒例のモーニングサークル。

そして2回目のシュラムダーン(奉仕活動)は、肉体労働ではなく比較的マイルドな手仕事が中心!これはトゥルシー(ホーリーバジル)の葉っぱで、お茶にするため茎と花の部分を取り除く作業をした。

大半の時間は、みんなでおしゃべりしたり音楽を聴きながら葉を摘んでいく癒しの作業で、残りは写真にはないけど雑草抜きをした笑(それも大事な仕事!)

アプルーヴァナンダ教授のセッション「ガンジーと平和①」

この日は初めてお会いするアプルーヴァナンダ教授(Prof.Aproovanand Jha)によるレクチャー。専門的で話がむずかしいと聞いていたけど、物腰はとても柔らかな方。

サティシュとちがって言葉そのままというよりも、取ったメモを訳してシェアしていきます。

まずは「ガンジーと聞いてどんな言葉が浮かぶ?」というブレインストーミングから。そもそもガンジーとは何なのか?

参加者から出てきた言葉の一部がこちら。

  • Om ヨガでよく唱えられるマントラ。創造・維持・破壊という自然のサイクルを表す
  • shanti サンスクリット語で「平和」
  • simple living シンプルな暮らし、生き方
  • non-violence 非暴力
  • freedom 自由
  • swaraj スワラージ(1本目の記事参照
  • peace 平和
  • justice 正義
  • selflessness 無私、利他

Non-violence without hatred
非暴力とは何なのか?そして暴力とは何なのか?暴力と一言で言っても、肉体的暴力、精神的暴力、心理的暴力などさまざま。
ガンジーは「憎しみのない非暴力」と言った。

 
Oppression is injustice, violence, inequality
抑圧とは、不正、暴力、不平等である。
ガンジーが闘っていたことは抑圧で、人が抑圧されている状況・不正を絶対に許さないことだった。

多くの人は、抑圧を正当化している。抑圧者は良かれと思ってやっているし、抑圧されている人もなんとなく受け入れている。そしてそれに抵抗するのにはものすごいエネルギーがかかる。

 
Resistance. Refusal. Saying NO.
抵抗とは、拒絶。「ノー」と言うこと。
私たちは不平等や不正に抵抗しなければならない。受け入れてはならない。

「非暴力」「抑圧」「抵抗」と、ガンジーについて理解するためのキーワードがどんどん登場。

そしてインドの歴史やカースト制など、私たち日本人には理解しきれない内容(勉強不足……)も出てきたものの、ガンジーが登場した背景を理解する上での大きなポイントの一つは

  • インドのイデオロギーは「優劣」の観念、「分裂」である

ということ。

出典:BBC “What is India’s Caste system?”

Treat your enemy as a human, a friend.
I don’t hate you, because I can be you.

あなたの敵を人として、友人として扱いなさい。
私はあなたを憎んでいない。なぜなら、私はあなたになれるから。

憎しみのない非暴力とはどういうことなのか?それはこの一文に表れているのだと思う。

誰もが暴力的な行為をする可能性があり、それをしている相手を憎むということは、自分自身を憎むことに等しい。

そして今イスラエルがパレスチナにやっていることは、彼らがかつてナチスにされていたこと。だからこの憎しみの連鎖を断たなければ、いつまでも真の平和は訪れない。

ものすごくパワフルな言葉で、かつ真に理解してそれを体現していくのがいかにむずかしいか考えさせられる……


ちなみにガンジーについて、なんとなくぼんやりしたイメージを持っている人が多いかもしれない(私もまさにそうだった)。

それをより明確にするために、アプルーヴァナンダ教授が強調していたことが

  • 彼はあくまで「政治家」であり、倫理的(エシカル)な方法で政治を行おうとしていた
  • 西洋文化や個人主義の考え方に強い影響を受けた
  • 危機を作り出した男だった
  • 卑怯者(coward)であることよりも暴力を選んだ

といった点。

正直言って私も彼のレクチャーを受けるまでは、もっとフワフワした「平和〜」なイメージが強かったことを大いに反省……

なんていうか、軽々しく「平和」という言葉を使っていいのだろうか?という気持ちが湧いてきたし、もっと言葉の定義も含めてしっかり理解する必要があるなと思う。

11/23(金):午後

ナブダーニャスタッフによるナブダーニャのお話

午後は急遽、ナブダーニャの活動に関するレクチャーがスタッフによって行われた。

ナブダーニャの創設者であるヴァンダナ・シヴァが今回体調不良によって来れなかったため、私たち参加者の理解を深めるための計らいだと思う。

このとき私は疲れていたのか?全くメモが残っていないので、最近見ているドキュメンタリー『幸せの経済学』を紹介させてください:

今、問われる幸せとは?真の豊かさとは?

人や自然とのつながりを取り戻す暮らし方を探るドキュメンタリー。本当の豊かさとはなにか?それを、今こそ考える時ではないでしょうか。GDPからGNHへ。グローバリゼーションから、ローカリゼーションへ。世界中に広がるローカリゼーション運動のパイオニア、ヘレナ・ノーバーグ=ホッジが、人と自然とのつながりを取り戻す、「ローカリゼーション」を提唱します。

引用元:cinemo

このドキュメンタリーにヴァンダナも出演している。

グローバリゼーションによって土地を奪われ、職を失い、生計が立てられず自殺に追い込まれた小規模農家が確か100,000人以上いると彼女は話していた。

グローバル企業に私たちの暮らし、何よりも生きる上で大切な「食」が支配されつつある現状を変えるため、ナブダーニャとヴァンダナは闘い続けている。

セッション「ガンジーと平和②」とソーヤー海の解説

多分だいぶエネルギー切れしていたようで、午後のアプルーヴァナンダ教授のセッションの写真がなく、メモも非常に少ない……

How do you resist violence?
どうやって暴力に抵抗するか?

参加者によるディスカッションや質問が多かったような記憶。

とにかく相変わらず濃厚なセッションで、その後に日本人グループはソーヤー海くんによる解説の時間を取った。そのメモを少し:

ガンジーは「暴力」の専門家。それに対してどう非暴力で答えるかを徹底的に実験してきた。そしてそれを国家レベルでやった人。

今のインドではヒンズー教至上主義の総理がパワーを持ち、イスラム教の人たちが排除されている。デリーで虐殺が起きたり、投票権を奪われている。

ヨーロッパやアメリカでも、一つの宗教や人種から成る国家を作ろうとする動きやファシズムができている。

民主主義と平和、平等はどこへ?

暴力的な相手自身を憎まず、それが生み出された構造を変えていくよう働きかける必要がある。

最後の夕食と焚き火パーティー

ついに最後の夕食。ここでなんと、日本人チームによるおむすび作りが行われた!

北海道でお米を作っているピロちゃんがはるばるインドまで持参したお米を利用し、そこにCHADO.が持参したご家族による手作りの広島塩を投入。

とっても素敵なギフトだったね☺️

大きな焚き火ができたところで、左に立っているスタッフのチャンドラによるちょっと長めのお話がスタート笑

そしてそれぞれの国や地域の文化紹介も含めた、歌ったり踊ったりの楽しいひとときが繰り広げられた。

コースとナブダーニャ滞在がもう少しで終わってしまう、名残惜しい時間……

11/23(土):午前中

ナブダーニャで最後の朝、モーニングサークル

6日目の朝。ついに日本帰国の日がやってきた。(引き続きナブダーニャに滞在したり、インドを回った参加者もいたけど、海くんと私は残念ながら日本へ)

前半の記事に書いたように少々気落ちしたところからスタートした私だったけど、後半ではだいぶ活力を取り戻し、ナブダーニャも居心地の良い場所になっていた。

(今まで触れてこなかったけど、朝晩がかなり冷え込み、そんな中シャワーというかお湯を浴びるのはとても辛かった!お湯がもらえるだけ良かったけど笑)

こうしてコミュニティの人たちと輪になり、顔を合わせて詩や歌を分かち合う朝の時間はとても豊かだった!

アプルーヴァナンダ教授による補足

もともと6日目にはセッションの予定はなかったけど、海くんが前日の焚き火で教授とディスカッションが白熱し、ぜひ最後に日本人へのフォローアップを!とこの場が設けられた。

やはり私たちの多くがインドの歴史的、政治的背景を理解しておらず、その補足も含めた時間に。

◉Idea of superiority and inferiority 優劣の観念
If we fight for nationalism, there is danger that you might turn into narrow people. You might think that you are superior to others.
If you are fighting for freedom, everyone must be equal.

ナショナリズムのために闘うと、視野の狭い人間になってしまう危険性がある。自分が他人より優れていると考えるようになるかもしれない。
もし自由のために闘うなら、全ての人が平等でなければならない。

 

◉Injustice 不正
Gandhi seeked for injustice. If you really want peace, you must look at the injustice and violence around you.
ガンジーは不正を探し求めた。本当に平和を望むなら、周囲の不正と暴力に目を向けなければならない。

 

◉日本被弾協とノーベル平和賞
The victims, people who have gone through these injustices (arrogance of nationalism in the USA) have the mission to stand for them when they see it again.
You have to stand for the suffer of the violence, and have no ambiguity.
被害者、つまりこうした不正(米国におけるナショナリズムの傲慢さ)を経験した人々は、再び同じことを目にしたとき彼らのために立ち上がる使命がある。
暴力による被害のために立ち上がらなければならず、曖昧さがあってはならない。

インドと日本の関わり、戦時中の日本、広島・長崎での核爆弾投下など、私たちにとって身近な事例を挙げてくれたおかげで、個人的にもかなり自分ごととして受け止められるようになった。

特に日本被団協が先日ノーベル平和賞を受賞した話は、私にとってはかなり身近な話題。

というのも、被団協の代表委員の一人である田中熙巳さんと今年の春ピースボートに一緒に乗船したから!

国際交流NGOピースボート
日本被団協のノーベル平和賞受賞にあたって 日本被団協のノーベル平和賞受賞の報を聞き、心から嬉しく思っています。本当におめでとうございます。

ピースボートは長年にわたり被爆者の方々と共に核兵器廃絶を訴えてきました。2008年から実施している「ヒバクシャ地球一周:証言の航海」(通称:おりづるプロジェクト)では、これまで170名を超える広島・長崎の被爆者の方々とともに、船旅を通じて世界各地で証言会を実施し、核兵器廃絶のメッセージを世界に届けてきました。被爆者の方々の生き様や証言に触れた世界中の人々、そして船内の若者が、大きな勇気を受け取り、その思いを行動に変えていく姿を何度も目の当たりにしてきました。

2017年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の国際運営団体としては、被爆者の方々とともに核兵器禁止条約の推進に向けての活動も行なってきました。核兵器禁止条約につながる重要な会議の場には、必ず被爆者の方々の姿がありました。草の根の地道な努力も、諦めずに続ければいつか必ず国際法として実を結び、国際規範を変え得るのだと教えてくれたのは被爆者の方々です。

引用元:国際交流NGOピースボート

船内で行われていた「おりづるプロジェクト」に私自身は関わっていなかったものの、田中熙巳さんを始めとするヒバクシャの方々のお話を直接伺う機会もあり、本当にかつて日本で起きたことなのだと実感が湧いた。

やはりその時代を生きていなく、広島/長崎出身でもないし、学校の歴史の授業で触れるだけではリアリティが薄い。

だからこうしてピースボートが船内及び世界中で被団協の方々とともに「核兵器は絶対悪だ」と訴え続けることには大きな意味がある。

……と話は少し脱線したけど、アプルーヴァナンダ教授はその被団協が今苦しんでいるパレスチナに賞を捧げた点にも触れた。

不正を決して許さない。声を上げ続ける。闘い続ける。

非暴力とは何なのか?ガンジーの平和活動とは何だったのか?私たちにできることは?

まだまだ問い続けているけど、今回このコースに参加したおかげで確実に以前より強固な動機や使命感のようなものが私の中で生まれてきた気がする。

日本帰国の時間。最後に……

どうにかアプルーヴァナンダ教授との時間を設けられたものの、私たちがナブダーニャを出発する時間が迫ってきた!

最後にグループの集合写真を撮影し、慌てて迎えに来たタクシーに乗るハメに😆

今回の日本人グループのスタッフチーム!海くん、通訳のサラとカレン、本当にありがとう!

デラドゥン空港にて。最後までインドらしい食べ物を楽しみながら、もっとインドが知りたい!という強い思いが湧いてきた。

今回が私にとって人生初のインド旅。最高のタイミングでようやく行けて、さまざまな出会いに恵まれ、ほんの一部ではあるけどインドを垣間見られた旅だった。

ナブダーニャでのコース「ガンジーと3つの平和」の学び自体とても深く、自分自身のことも世界のことも考えさせられ続けている。

これまでの記事はそこでの日々の備忘録と、少し時間が経って感じたことや考えたことを付け足しながら執筆した。

ちょうど1ヶ月が経ち、その間自分の人生でもいろいろなことが起きていく中で「あ、サティシュや教授が言っていたのはこういうことかな?」などと結びつくことも多々あり……

間違いなくこのコースは私の人生の糧となるだろう。

少しでもそのエッセンスが伝えられていたら嬉しいし、平和や非暴力、暴力、不正などについて考えるきっかけになれば幸いです!

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この記事を書いた人

Romy | ロミーのアバター Romy | ロミー 〜Celebration of Life〜

鎌倉在住7年半を経て2023年末に家を手放し、ピースボートの2024年春クルーズにスタッフとして乗船。現在バリを拠点に、リジェネラティブな暮らしを探求しているモバイルボヘミアン。世界の多様性と美しさを伝えつつ、環境破壊を始めとするさまざまな問題提起も発信を通じて行っています。
→ Romyのプロフィール詳細

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