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日本の原風景を求めて。千葉県鴨川の「小さな地球」林良樹さんと天水棚田を訪れる里山ツアー
私が事務局を務めるオンラインの学びと実践の場「いかしあうデザインカレッジ」。
パーマカルチャー、NVC(非暴力コミュニケーション)、コミュニティオーガナイジング、食、地域通貨など、さまざまなテーマを通して「いかしあうデザイン」をメンバーとともに探求しています😁
そこで4月、千葉県鴨川市の釜沼集落に暮らす林良樹さんにゲストとしてオンライン講義をしていただきました。
良樹さんは世界各地を旅した末、1999年この場所に一目惚れして移住。それ以来都会と田舎をつなげる活動を始め、企業や大学などと連携しながらこの里山を「地縁血縁を超えたみんなのふるさと」にしていった方。
そして2019年の大きな台風のあと、「小さな地球」という名のプロジェクトを立ち上げたのです。
美しい村が美しい地球を創る。
小さな地球HP
1千年続く棚田と古民家を含む里山の時間と空間をぼくらのコモンズ(Commons/共有財産)とし、人と人、人と自然、都会と田舎をつなげた大きな輪を描き、美しい「いのちの彫刻」としてみんなで「小さな地球」をつくろう。
ミーティング時に少しお話を聞いてHPを見ただけでも、感動して涙が出そうになり…… 講義自体も本当にすばらしくて、オンラインでも震えるような「感じる」時間で。絶対現地に行きたい!と強く思った。
そしてフランスから一時帰国するメンバーに合わせて、あれよあれよと今回のツアー企画が進んで無事実現!
10名強のメンバーが、国内も関東近郊だけでなく北海道、長崎からはるばる千葉に集合。わいわい楽しい交流を兼ねたフィールドトリップでした🌿
ツアー内容はこんな感じ。
- 7/10(日)15時に現地集合 → 夕飯の買い出しや近くの温泉へ →夕飯 →焚き火と花火
- 7/11(月)良樹さんのお話会&案内 → 昼食 → 解散
この記事の前半では、案内していただいたそれぞれの場所の簡単なご紹介を。後半では、私が個人的に感じたことや特に印象に残ったことを綴っていきます!
千葉県鴨川市「小さな地球」の簡単な案内
天水棚田と良品計画の棚田オフィス、炭小屋
まずは小さな地球のシンボルとも言える、棚田のある風景から!息を呑むような美しさとはこのことにちがいない🌿
草の上を歩くときの足の感覚や音、立ち上がる匂い、鳥の声、棚田に反射する光のきらめき、広がりのある空間、ふわっと柔らかく包まれるような安心感……
こればかりは、現地に行って実際に体感しないとわからない感覚!
千年以上も守られてきたこの棚田は、水路が作れず雨水と山の湧き水が頼り。だから「天水」棚田と言うそうで、つまりお米の収穫量がその年の雨量に大幅に影響されるということ。
棚田の一番上にある建物は、良品計画の「棚田オフィス」。
実は良樹さんが理事長を務めるNPO法人うずと良品計画が、2014年より共催で都市住民と協力して棚田を保全する「鴨川棚田トラスト」を始めている。
「鴨川棚田トラスト」では、「有機米の会」として、田植えや草とり、稲刈り、脱穀といった農作業に毎回多くの都市住民が参加。その後、大豆の種まきから始める「手づくり味噌・醤油の会」など活動が広がりました。
ローカルニッポン「無印良品の鴨川での取り組み」
下は棚田オフィスとデッキが誕生したときの良樹さんの記事。田植えには総勢300名も参加したとか!
コンセプトは、1階が農具置き場や休憩できる場、2階が会議やパソコンができる仕事場で、ウッドデッキではコンサートを開いたこともあるそう!
こんなに美しい風景が目の前に広がる環境で仕事ができたら…… 人や地球環境を傷つけたり、何かを奪ったりするようなことは決して浮かばないのでは?
この豊かな地球を守りたい、そしてそこに住む生き物や人々を守りたい、大切にしたい。そんな思いが自然と湧いてくるんじゃないかなぁ。
棚田から少し降りていったところには炭小屋が。
炭焼きは里山文化のシンボルで、今もみんなで分担してやっているのだそう。炭になるまで1ヶ月くらいかかるんだって!
炭焼きの工程を紹介しているブログを見つけたので、興味ある方はぜひ。
宿泊した古民家ゆうぎつかと牛小屋
左が、いかしあうデザインカレッジメンバーで宿泊させてもらった「ゆうぎつか」。そして右が良樹さんが住んでいる牛小屋。
ゆうぎつかは築200年を超える古民家で、写真のように立派な茅葺き屋根が特徴。
2019年の台風でもともと屋根を覆っていたトタン板が吹き飛び、むき出しになった茅葺きを見てその美しさに感動。そして茅葺き屋根の再生も含めて、この里山の風景を守りたい!とさらに思ったのだとか。
そのときの詳しいエピソードや写真は、ぜひ下記のグリーンズ記事へ!
上に登ったところには近々タイニーハウスを建てる予定なのだそう。遠くのほうには海も見えて絶景だった!
福岡達也さん
良樹さんとともに活動する福岡達也さんのご自宅にも案内してもらいました!左端に小さく写っているのがご自宅と、その横には建設中のサウナ(もともと蔵があった)。
ちょうど前日に大学生たちが泊まっていて、みんなでサウナづくりに勤しんでいたんだって。そしてこの果樹園のそばにやはりタイニーハウスを数軒建てる予定なのだそう。
達也さんはもともと横浜市にあるパーマカルチャー的なシェアハウス「ウェル洋光台」に住んでいて、そこで出会った梓さんと結婚。2020年に鴨川に移住して、今はこの広大な土地をいかした半農半X暮らしを送っている方。
ちなみに奥様の梓さんは、5月の鴨川市議会議員選挙で当選!移住者でしかも女性が当選ってすごいことだよね!
※ウェル洋光台もとっても素晴らしい場所です!いつか記事にしたい
古民家したさん
2日目のランチ場所は、宿泊可能なコモンスペース「古民家したさん」。ここは小さな地球の活動ために共同購入した場所。
ランチを待つ間、良樹さんに施設を案内してもらいました!奥に立つのは、ギャラリーになっている蔵。古いものを生かして引き継ぎながら、現代の知恵を融合して改修していったそう。
みんなで共有して、作業も共同にすることで、こうした文化を次の世代にも渡せると思うんです。ここを閉じたエコビレッジ化するのではなく、大人でも学生でも家族でも、ここに来て作業したり一緒に楽しんでもらう。お手伝いしてもらえたら僕らも助かるし、都会暮らしの方々にとっても心身に良い機会になるでしょう。自由に参加しやすい仕組みをつくり、都市も田舎も、一緒に心地よい社会をつくる。それを「したさん」でやっていきたいと思っています。
greenz.jp「共所有「コモンズ」をつくる意味。循環する未来へ進むプロジェクト「小さな地球」を訪ねて」
前日は外国人グループが宿泊していたそう。Airbnbで借りることも可能だし、コミュニティメンバーになってワーケーションとして泊まったり、イベントを開催したり、と多様な使い方ができる。
見るからに美味しそうなランチには、地元のお豆腐屋さんの豆腐や鶏肉など、もちろんローカル食材がたっぷり!
番外編:「里のMUJI みんなみの里」
最後にご紹介するのは、私たちが夕飯の買い出しがてら訪れた「里のMUJI みんなみの里」。
2018年4月に誕生し、直売所やCafé & Meal MUJI、多目的スペースもある。無印のこうした地域活性化の取り組みはとても興味深くて、個人的にもこっそり応援しているんだよね(笑)
“直売所では南房総エリアの商品を紹介し、Café & Meal MUJIでは地場産品や伝統料理、ジビエを利用したメニューを提供することで都市部の方が鴨川に訪れるきっかけとなること。そして地元の方々にとって生活インフラとして日常に「役に立つ」場所となること。この双方を同時に実現することで、都市部と地元の交流を生み出し、地域活性化につなげていくことが「里のMUJI みんなみの里」の目標です”
ローカルニッポン「無印良品の鴨川での取り組み」
感じたこと・心に響いたことを少しご紹介
日本の「田舎」との出会い
祖父母はどちらも神奈川の街中に住んでいたし、幼少期はアメリカで過ごした私。日本の里山や原風景にほとんど縁のない人生だったけど、その中に身を置いてみることができて本当によかった✨
いわゆる田舎暮らしをちょっとだけ体験させてもらえた気がする。
田舎のおじいちゃん・おばあちゃんの家で過ごす夏休み。麦わら帽子と虫取り網、縁側でスイカ…… 小説や昭和の映画にでも出てきそうな典型的な日本の風景が、私の中には一つもない。
みんなが大好きなジブリ作品も実はいまいちピンと来なくて、というより疎外感を感じたくなくてなるべく見ないように避けてきた気がする。
この話はこれまでほとんど誰にもしてこなかったけど、帰国子女だった私の日本人コンプレックスのようなものなんだと思う。
まだ書いていて複雑な気持ちはあるものの、そんな昔はどこにでもあったであろう日本の原風景に触れて、素直に美しいと感じられた。私が生まれたこの日本という国の魅力を再発見できた。
じっくり育んでいく風通しの良いコミュニティ
田舎って閉鎖的でめんどくさいイメージがあったけど、中の人、外の人という隔たりがなく出入りがあって「風通しの良い場所」と感じた。
それは良樹さんの、あらゆる人を否定せず、オープンでいて、ちがう価値観を受け入れるという姿勢や空気感のおかげが大きいのだろう。
良樹さん自身、高齢化が進むこの土地に移住してきた当初から溶け込んでいたわけではなく、地元の方々、長老たちと少しずつ関係性を育んでいったそう。
そして彼らの理解や応援、協力が得られるようになり、今では良品計画を始めとする大手企業や大学とも連携し、イキイキとしたコミュニティができている。
こういった場を持っている方々の話を聞くと、「素晴らしい取り組みだけど、自分にはできそうにない」などとつい考えがち。でもこれは、良樹さんが20年以上かけて築いてきたもの。
スピードや効率重視の都会での生活に忙殺されていると、すぐ結果を求める思考になる。いや、都会でなくても現代に生きる私たちは皆そうかもしれない。
でも自然の中にいると、コントロールできないことばかりだし、タネを植えても芽が出ないかもしれない。実がならないかもしれない。
すぐ結果が出なくても焦らない、なんなら結果は自分がいる間には出ないかもしれない。それくらいのゆったりした気持ちで、じっくり人との関係性も場も育んでいきたいと改めて思った🙂
自然とつながる暮らし方の多様性と「関係人口」という関わり方
ここ数年、アーバンパーマカルチャー講座のサポートをしたり、今回一緒に行ったメンバーが在籍する「いかしあうデザインカレッジ」の事務局をしている。
そうすると、私ももっと自然の中で暮らしたい、自給自足とまでいかなくても、少しでも自分が食べるものを育てることにチャレンジしたい、などと思うもの。
でも、田舎に移住しよう!というのとも今はちがって、鎌倉みたいな都会と田舎両方の要素がある街も好きだし、うーん…… というのが現状。
そんな中、完全に移住する、もしくは2拠点生活以外にも、「関係人口」という関わり方の可能性を見せてもらえた。
実際私の友人も今年は「天水棚田でつくる自然酒の会」に参加していて、毎月家族で良樹さんのところに通っている。(詳しくは下記記事にあり↓)
都心部に住む人たちでもこうやって自然の中で思いっきり体を動かす。みんなと作業する。そして収穫をお祝いする。そんな体験ができるって素敵!
通っているうちにだんだんそこが自分の居場所になっていき、「風景の当事者」になっていく。自分たちも循環の一部なんだと体感できるようになる、と良樹さんは話してくれた。
いでかれメンバーと「いかしあうデザイン」の実践
「いかしあうデザインカレッジ(通称いでかれ)」は普段オンラインで講義を受けたり交流をしているから、リアルで会えたことはやはり大きな収穫✨
「いかしあうデザイン」という曖昧な言葉(笑)に惹かれて参加してくれているメンバーは、年代も住んでいる場所や環境もバラバラ。
今回の里山ツアーは事務局ではなくメンバーによる自主企画で、私含めたスタッフは最低限のサポートのみ。ハプニングも多少はあったかな??でも楽しいツアーだった!
現地では特に明確な役割が一人一人にあったわけではなく、それぞれがその場所でそのときにできることをやって、うまくいった。基本みんな個性的でマイペース(笑)
そして改めて、オンラインで話を聞いた人と場所を実際に訪れて、五感をフルに使って体感することの大切さを実感。頭で知っているのとはちがう。
これからもオンライン&リアル、両軸でいきたいね!(去年行った日帰りツアーの記事↓)
終わりに:全ての人はアーティスト!私もビジョンを描き「伝える人」でありたい
「小さな地球」林良樹さんと天水棚田を訪れる里山ツアー、すばらしい体験ができ、行けて本当によかった!
1泊2日と短い時間だったけど、感じたことがたくさんあって、戻ってしばらくは自分1人の時間に集中したい気分に。
ちょうど仕事を一つ辞めることにし、人間関係でも悩んでいたけど、自分の中の軸を取り戻したような……
一緒に行ったいでかれメンバーも、それぞれの人生をどう生きるか見つめ直すいい機会だったみたいで、今後のビジョンが見えたという人もチラホラ。
旅を終えてから気づいたのは、ビジョンを描くことの大切さを良樹さんに教えてもらったということ。(一緒に活動しているソーヤー海くんもいつも言っている!)
上の絵は、良樹さんが描いた「小さな地球プロジェクト」。良樹さんは子どもの頃から絵を描くのが好きだったんだって。
こうして理想の風景や作りたいコミュニティをわかりやすく描き、誰にでもわかる言葉で伝えていくことで、それに共感・共鳴した人たちが少しずつ集まってくる。
そして良樹さんはあくまでも「透明」でいながらみんなを応援することで、一人一人がアーティストとして輝いていく。
私自身も「伝える人」として、こんな美しい世界や人々、活動があるということをもっといろんな人に知ってもらいたい。その一つの手段として、このブログでの発信を続けたいと再確認しました✨
良樹さん、ありがとうございました!また伺います!
林良樹さんのプロジェクトのリンク:
2023年11月追記:「いかしあうデザインビレッジ」にリニューアル!
いかしあうデザインカレッジは、2023年4月「いかしあうデザインビレッジ」にリニューアルしました!
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